大阪大学産学連携のあゆみ

―阪大の産学連携が社会を変えた―

本学の産学連携は、実学の伝統を生かし、基礎と応用のバランスをもって社会の付託に応える教育研究を実践しています。

1967年には、「世界で初めての自動改札機の導入」があり、これは、阪急北千里駅においてパンチカード方式による定期券用自動改札機と磁気(バーコード)方式の普通乗車券用自動改札機による世界最初の自動改札システムで東海道新幹線などと並んでIEEE(アイトリプルイー)のマイルストーンに選ばれた歴史的偉業です。

2005年には、国産初の抗体医薬品で、中外製薬と共同開発した「トシリズマブ」がキャッスルマン病治療薬として承認されました。この薬は関節リウマチ治療薬として適応拡大し、2013年には世界の売上高が10億スイスフラン以上になり、ブロックバスターの仲間入りをしました。

最近では、飛行機内に乗客が持ち込む飲料を容器外から検知して、爆発物かそうでないかを見分ける「近赤外光による液体爆発物等の検査技術の発明」があります。本発明は、大阪大学で研究開発された後、株式会社熊平製作所において製品として開発され、国内の空港のみならず、海外の一部の空港での利用も始まっており、テロ対策として安全安心の社会構築に大きく貢献しています。

―産学連携の歴史―

技術シーズをベースとして実施していた個別の共同研究から、2006年度には1研究室と企業の1部門が組織的に実施する共同研究講座(部門)制度を創設し、その後、2011年度には、企業の研究所を学内に誘致(Industry on Campus)し、学際的で多面的な活動を行う協働研究所制度を導入しました。このように大阪大学は、常に産業界との対話を通して必要な新たな施策を先見して講じています。

2016年度には、共同研究講座(部門)や協働研究所制度からさらに連携を深化した企業との包括連携契約による新たな組織対組織の大型産学連携を日本で初めて開始しました。この大型産学連携は、これまでの産学連携から産学共創のステージに活動を進化し、基礎研究の段階や共同研究の課題設定の段階から大学と企業とが互いの知と力をあわせて、課題設定の段階からともに取り組むところに特徴があります。

Open Innovation 産学連携の歴史

ー先進的な組織間連携ー

大阪大学は、従来からの大学の研究者と企業の研究部門による「個」対「個」の産学連携や、社会実装への出口の部分のみを対象とした共同研究等とは一線を画した、「組織」対「組織」による「共創型」の産学連携を強力に推進しています。

企業と大学が長期的視点で社会のニーズや課題について共に考え、双方の「知と力」を合わせて創造的な活動を展開することによって、より優れた成果を社会に還元していくことを目指します。

事例1:基礎研究段階からの包括的産学連携

2016年に中外製薬株式会社、2017年に大塚製薬株式会社と、先端的な免疫学研究活動に関わる包括連携契約を締結しました。研究者独自の自由な発想に基づいた基礎研究に専念できる環境を維持しつつ、有用なテーマを大学と企業との共同研究等として社会実装へと繋げます。基礎研究段階からの産学連携により、長期的視点で基礎研究から応用研究までのシームレスな連携を実現するものです。

  • 事例:中外製薬株式会社との包括連携

事例2:「共創型」の多面的な組織間連携

2017年にダイキン工業株式会社と、情報科学分野における10年間、総額56億円の包括連携契約を締結しました。社会のニーズや課題について共に考え、大阪大学の先進的な情報科学分野の知見とダイキン工業がもつ空調技術や産業技術の幅広いノウハウを結びつけ、世の中に新たなイノベーションを生み出そうという「共創型」の組織間連携です。大阪大学の研究者とダイキン工業の技術者による共同研究を含めた新たな4つの連携プログラム(①共同研究・委受託研究、②先導研究プログラム、③学生研究員プログラム、④AI人材養成プログラム)を実施し、これらの幅広い取り組みにより、新たな価値を社会に還元することを目指します。

  • 事例:ダイキン工業株式会社との包括連携

更に、2019年にはシスメックス株式会社と、個別化医療や予防先制医療をはじめとした新たな診断技術や、新たなヘルスケア事業の創出に向け、共同研究、学生研究員支援などに関する包括連携契約を締結しました。