ご挨拶

機構長(総長)西尾 章治郎

大阪大学の精神的源流は、18世紀の大坂商人たちが自発的に開いた学び舎である「懐徳堂」、19世紀に西洋の学問を志した若者が藩の枠を超えて集まった「適塾」に求めることができます。その系譜は、地元政財界と市民の熱い要請によって誕生した大阪帝国大学を経て、現在の大阪大学につながります。

本学は、まさに社会の要請に応え、社会の支援によって創設された大学です。2031年に迎える創立100周年を視野に、今こそ原点に立ち戻るべく、「University in Society, University for Society」の精神のもと、2018年1月に学内外をつなぐ中核組織として「共創機構」を立ち上げました。本学の考える次世代の大学モデル「University 4.0」につなげます。

「共創(Co-Creation)」とは、社会と「共に新たな価値を創造する」ことを目指す理念です。企業、自治体、各種団体、地域社会、他大学、そして広く市民の皆さまなど多様な担い手との「共創」によって、本学は、新たな知の創出、人材育成、イノベーションの創出に尽くしていきます。この「共創」による好循環システムを具体化したものが「研究開発エコシステム」です。

さまざまな社会課題の解決に向けて、大学が人文科学・社会科学分野、自然科学分野を問わず全ての垣根を取り払い、一体となって立ち向かうために、共創機構は、その核となり、大阪大学の活動、使命達成のためのエンジンとなります。

また、2018年10月には文部科学省から「指定国立大学法人」に指定され、「世界屈指のイノベーティブな大学」を構成員一丸となって目指しているところです。共創機構はその方向を見据える羅針盤、大学全体の共創活動を統括する司令塔としての役割をも担います。

本学はこれまでも、国内外の産業界との連携により卓越した研究成果を挙げ、産学連携から産学共創という新たなステージを迎えるとともに、市民との多岐にわたる交流で社学共創を進め、基金の活用や卒業生との連携により新たなネットワーク構築を展開してまいりました。これらの良好な関係を保ちつつ、社会との連携をさらに積極的に推進し、社会変革に貢献していきたいと思っております。

そして、共創機構が全学の一元化窓口となって、皆さまに本学の教育・研究活動の最先端の魅力をお伝えします。そのうえで皆さまからは、共創機構を通じて、本学へのさまざまなご要望、ご意見を届けていただければ幸いです。

副機構長(理事・副学長)金田 安史

大阪大学は、個々人が社会で活躍できる寿命(社会寿命)を延伸させ、個々人の多様性を生かすことによって、豊かで幸福な人生をすべての人が享受できる社会の実現を目指しています。

その活動の基本コンセプトは、研究開発エコシステムの構築です。これは、研究現場から生み出される研究成果を社会実装し、人や社会での検証を基に社会課題を明らかにし、その情報を収集・分析して、また研究現場に戻すことにより基礎研究を深め、新たな研究領域を開拓し、イノベーションを創出。これによって社会貢献のみならず、研究そのものを推進し、その中で人材を育て、その結果として資金の獲得が可能になります。

このエコシステムを支えるために、大阪大学では、かつての産学連携本部を改組し、2018年1月に共創機構を立ち上げました。これはピンポイントの連携ではなく、組織対組織の関係を築き、それによって画期的なイノベーションを創出する組織です。

共創機構の基本姿勢は、大学の各研究科の研究成果を大切にし、それを全学的な視野を持って支援することにつきます。そのために全学の3か所に共創機構分室を設置し、担当者を常駐させて知財の強化とベンチャー創出支援を行っています。そのための支援資金や大阪大学ベンチャーキャピタルからのファンドも準備しております。

また次世代の革新的なイノベーション創出のために産業界の方々と、全学の大学関係者がそれぞれの課題を自由に検討し、解決策を見出して、具体的な方策を実現できる“未来社会共創コンソーシアム”を2020年4月に立ち上げました。

一方、社会実装によって明らかになる様々な課題を的確にとらえて分析する必要があり、共創機構は、研究成果の社会への発信とともに、課題の情報収集を行い、大学研究者やURAと協力して新たな研究課題の分析に貢献しています。

今後は共創機構が核となり、大学全体の力を結集し、社会の様々な領域の方々の協力を仰ぎながら、国際的な展開も視野に入れ、知・人材・資金の好循環を実現いたします。